『心がほどける介護日記』第3話 ~母が残してくれた言葉~

笑顔で心豊かな人生を整える
介護・生前整理・整理収納・防災のライフナビゲーター
福島県石川町 くらしのトータルサポートKOKUYA代表

伊東眞理子です

『心がほどける介護日記』第3話
~母が残してくれた言葉~

介護は一人で抱えない

介護は、一人で背負おうとすると見えなくなることがたくさんあります。
不安や迷いを抱えたまま、誰にも言えずに過ごすこともあります。
でも、ほんの少し誰かに頼ることで、心がふっと軽くなる瞬間があります。

母の介護を通して感じたのは――
「介護はひとりではできない」ということでした。

寄り添う訪問医の先生

訪問医の先生は、いつも穏やかで、
患者だけでなく家族にも寄り添ってくださいました。

診察のたびに、
「今の状態はこうで、これからはこうなっていくと思います」
と、丁寧に紙に書きながら説明してくださる。

その通りに母の体調が変化していくたび、
“あの時の説明通りだ”と思い出しては安心できました。

最期の三日間、母がうわ言を言うようになったときも、先生はやさしく言って教えてくれました。

「びっくりしたでしょう。でもね、それはお別れの時間なんだだら、そっと見守ってあげて…
もう少ししたら、しゃべりも終わり眠る時間が多くなっていくから。」

その言葉に、胸の中の緊張がほどけました。
“見守る”ということの本当の意味を、この時に知りました。

訪問看護師さんたちのチームの力

訪問看護師さんは、毎回違う方が来てくださいました。
最初は少し戸惑いましたが、理由を聞いて納得しました。

「一人の目ではなく、みんなで共有することが大事なんです」

それを聞いた時、
“介護は一人の力ではなく、みんなで支えるものなんだ”と心から感じました。

どの方も明るく、優しく、母の話をよく聞いてくださいました。
「こちらは介護をしているとは思えない、皆さん明るくて癒される心地よいお宅ですね」
「ここに来ると私たちも癒されます」

そんな言葉をいただくたびに、
“ああ、この家の空気を守れている”と嬉しくなりました。

家族の支えのありがたさ

夫も本当によく母を見てくれていました。
私が出かけるときも「楽しんでおいで」と送り出してくれる。
母ともよく話していて、
母が「こんなわがままな娘と一緒になってくれてありがとう」と笑うこともありました。

今思えば、夫も緊張の中での日々だったと思います。
“もし私がいないときに何かあったら”という不安を抱えながら、
それでも笑顔でいてくれた――
その優しさに、今の私は支えられています。

兄や義姉、姪甥もよく遊びに来てくれました。
近くの従姉妹たちも母の顔を見に立ち寄ってくれ、
家の中にはいつも人の温もりがありました。

母が残してくれた言葉

母の最期の言葉は、
「みんな仲良くね」――

その一言に、母の生き方がすべて詰まっていました。
自分のことよりも周りを思う、
そんな母らしいやさしさに、私は救われました。

あとがき

介護は、ひとりで頑張るものではなく、
“誰かと一緒に進む時間”だと教えられました。

支えてくれた人たちへの感謝、
そして母の笑顔に包まれた日々を、
これからも大切に心に刻んでいきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました

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